エンターテイメント企業として新たな領域へ
延田尚弘/NOBUTA NAOHIRO 株式会社 延田エンタープライズ 代表取締役社長
関西を中心に「123」「123+N」などのブランドでパチンコホール67店舗を展開するほか、ゴルフ、温浴、外食など多角的なエンターテイメント事業を手掛ける延田グループ。2019年5月に代表取締役社長に就任した延田尚弘氏は、カリスマ創業者である先代からのバトンを受け継ぎ、直後に訪れた新型コロナ禍という未曾有の危機を乗り越え、会社を安定軌道に乗せた。パチンコ事業の課題と現場改革、そしてデジタル領域やM&Aを駆使した新規事業への展望について詳しく話を聞いた。〔文中敬称略〕
聞き手=松林孝征(パック・エックス 社長)/構成=田中 剛(Answers編集長)/写真=丸山 裕

松林 2019年に、先代であるお父様から後を継ぎ代表取締役に就任されましたが、プレッシャーのようなものはありませんでしたか?
延田 1998年に入社した時点で、もう後継者としての覚悟があったので、特に専務に昇進したから、社長に昇進したから重圧が増したということはありませんでした。それを考えないようにしていた、と言ったほうがいいですね。ただ、社長に就任した翌年は、社会人人生の中で間違いなく一番大変な時期でした。コロナ禍でお客様は来ない、業界はバッシングされる、それに父の体調悪化が重なりました。2019年の秋頃から急に悪くなっていたのですが、年が明けた1月の再検査でステージ4の肺がんが見つかったのです。
松林 大変なことが重なってしまったのですね。
延田 大変でしたが、会社にとっては、「コロナ禍が構造改革を後押しした」という面もありました。当時、弊社の店舗の中には、小型店がまだ多くあり、規模、立地、競合との関係などで、立て直しが難しい不採算店舗もありました。かねてより私は、「この店に投資をするくらいなら、もう閉店して、伸び代がある店舗に投資した方がいいのではないか」と父に提案をしていました。しかしお店を作った父には、昔のよかったイメージが残っていて、立て直しにこだわり投資を繰り返していました。コロナ禍に改めて、「こういう状況だから…」と話をしたところ、ようやく理解してもらえて、20店舗ほど閉店することができました。時期が時期ですから周囲からは、「延田グループはかなり大変な状況のようだ」と思われていたようですが、会社にとってはプラス要素しかないし、私としては「よし、やっと閉店できたぞ」と非常に前向きな気持ちでした。
松林 閉店の一方で新規出店もしています。
延田 大阪では2021年7月に次世代旗艦店として『123+N羽曳野店』を大幅リニューアルしました。その後、2023年には2店舗、2024年には4店舗を新たに出店し、滋賀県という初めての場所にも進出しています。昨年末には大阪に『123門真宮前店』を出店しました。兵庫県にはコロナ禍以降4店舗を出店しています。

業界が陥ったパチンコの悪循環
松林 現在、パチンコ業界全体が抱えている課題についてはどのようにお考えですか?
延田 特にパチンコは、本当に悪循環に陥っています。メーカーは射幸性の高い遊技機しか出さない、我々パチンコホールもそういう台ばかり買う。メーカーの方々とお会いするたびに、私は言うんです、「もうちょっと射幸性が抑えられた、万人が遊びやすい遊技機を出せないんですか?」と。すると必ず、「じゃあ、そういう遊技機を出したら買ってくれますか?」と言われます。こちらは、「いや、それとこれとはまた話が別です」と言わざるを得ない。本当に堂々巡りです。ですから、遊技機メーカーさんだけを責めるつもりはありません。我々パチンコホール事業者にも責任があると、重々認識をしています。
松林 パチンコ全体がお金がかかるイメージが定着してしまいました。
延田 昨年のお正月に弊社の幹部20人ぐらいで住吉大社に初詣に行ったとき、「破魔矢を買おう」ということになりました。全店舗分の破魔矢を買うとなると、結構な金額になるんですが、そこでは現金しか使えない。私だっていまどきそんなに現金を持っていません。たまたま1人の社員が10万円もの現金持っていて、「えっ、何でそんな大金持ってるの?」と驚いたんです。彼はちょうどその日に、パチンコに行くつもりだったそうです。私は改めて、「いまどきパチンコに行くのに10万円持っていかないとダメなのか」という現実を目の当たりにして、「パチンコは変わってしまった」という気分になりました。
重要なのは休眠層の掘り起こし
松林 私はいま51歳ですが、いちばん熱中していた時期は、「冒険島」(1995年)、「大工の源さん」(1996年)が大好きでした。2万円、3万円あれば、賞球が0個だった「ギンパラ」でも一日楽しめました。
延田 私もかつては休みの日に朝から並んでいました。そのころの機種で言えば、「CRモンスターハウス」もすごく面白かったですね。私の年代の前後の人たちの多くは、昔はパチンコをしていたのに離れてしまった。そういった友人、知人からはよく、「今ってパチンコはすごくお金かかるんでしょ?」と聞かれます。やはり業界として、安く楽しめる遊技機で、かつてのパチンコの面白さを再認識してもらえるような店づくりをして、お客様を育てるような取り組みが必要だろうと思います。
松林 ゴールデンウィークに開催された、「推しの日」についてはどんな印象を持たれましたか? まずは無料で体験してもらおうという趣旨でした。
延田 やはり、未経験者にお店に来ていただくことは、なかなか難しいですね。私は当初から、「どうやってノンユーザーをお店に呼び込むのかな?」という点に疑問を持っていました。ただ、批判的なことばかり言って一歩を踏み出さないのでは何も進まないので、もちろん弊社の店舗も参加しました。実は弊社は20年くらい前に、パチンコ・パチスロを普段遊ばない人たちに体験してもらうために、店休日に20人、30人ぐらい参加していただき「無料体験会」をしたことがあります。ちゃんと遊び方の説明をしながら体験していただこうと思ったら、営業中の店舗の一角では難しいと思います。
>>> Part 2へ続く(7月21日に公開予定)



