エンターテイメント企業として新たな領域へ
延田尚弘/NOBUTA NAOHIRO 株式会社 延田エンタープライズ 代表取締役社長
関西を中心に「123」「123+N」などのブランドでパチンコホール67店舗を展開するほか、ゴルフ、温浴、外食など多角的なエンターテイメント事業を手掛ける延田グループ。2019年5月に代表取締役社長に就任した延田尚弘氏は、カリスマ創業者である先代からのバトンを受け継ぎ、直後に訪れた新型コロナ禍という未曾有の危機を乗り越え、会社を安定軌道に乗せた。パチンコ事業の課題と現場改革、そしてデジタル領域やM&Aを駆使した新規事業への展望について詳しく話を聞いた。〔文中敬称略〕
聞き手=松林孝征(パック・エックス 社長)/構成=田中 剛(Answers編集長)/写真=丸山 裕

社員の熱意を形にする提案制度 アイデア&チャレンジ
松林 御社では社員の方々が発案する機会があるそうですね?
延田 例えば、去年から社内でスタートした「ICプロジェクト」という提案制度があります。ICとは「アイデア&チャレンジ」の略です。社内ベンチャー制度のようなもので新規事業を提案する部門と、既存事業の効率化を提案する部門があり、昨年は100件以上の提案がありました。優れたものを表彰し、その中から2つ、3つが採用されて、すでに準備が進められています。表彰された提案のひとつはパート社員の提案でした。これも以前では考えられないことですね(笑)。
松林 どのような提案が実際に採用されたのですか?
延田 一例を挙げると、経済的に苦労している学生を支援する奨学金制度の立ち上げを準備中です。他には、広告制作業務の中の、外部に発注している部分について内製化を進めていきます。例えば、YouTubeチャンネルとかの出演者のキャスティングや、Web広告の運用などを、自分たちでやっていこうということです。ゆくゆくは、他社から仕事を受注できるようになれたらと考えています。
東京支社を新規事業開発の拠点へ
松林 2025年5月に東京支社を開設されました。この狙いは?
延田 関東には『123+N東雲店』を始めパチンコ事業で3店舗あるほか、インドアゴルフ、フィットネスなどの営業拠点が増えてきたので、事務所がないことが不便になってきたのが第一の理由です。それに加えて、この数年、会社が安定してきたこともあり、エンターテイメントの領域において、新たな事業を作りたいという想いが強くなってきました。その拠点は東京に置くのがやりやすいだろうと判断しました。
松林 すでにスタートした事業はありますか?
延田 東京支社とはあまり関係ないのですが、昨年(2025年)10月に、北海道に本拠を置く生ドーナツ専門店「MILKDO dore iku?」をM&Aしました。お話をいただいて、実際食べてみると美味しい。弊社はイタリアンレストランなども手掛けてきましたから、外食事業が片手間ではできない難しいものだと重々認識しています。ただ、本件は全国に30店舗(5月時点)を展開するフランチャイザー(本部)のM&Aです。基本的にはFC加盟店を増やしていくことになります。
松林 新設した「エンターテイメント開発事業部」のことをお教えください。
延田 パチンコ以外にも何か面白い事業をできないかなと模索する中で、エンターテイメント系のM&Aのお話をいただきました。我々にはノウハウがないので、「果たしてこの会社を買ってうまくやっていけるだろうか」というようなことを、デジタルエンターテイメント方面に精通した知人に相談していました。そうこうしているうちに、その方が弊社に興味を持ってくださったので、上席執行役員としてお迎えすることになりました。これを機に2026年4月に「エンターテイメント開発事業部」を新設しました。まずは、VR(仮想現実)やAR(拡張現実)を活用したエンターテイメントを体験できる施設の運営を目指しています。今、これだけ多くの外国人観光客が日本に来ていますが、パチンコ事業でインバウンドを取り込むのがなかなか難しい。VRやARを活用したエンタメなら、インバウンドも取り込めるだろうという狙いもあります。

業界は厳しいが勝ち残り店舗を増やす
松林 他にご検討中のことはありますか?
延田 「食のエンターテイメント」という事業コンセプトのもと、食を通じた感動体験の提供を目指しています。日本が誇る最高の食(ジャパンブランドとなる食材・食文化)は様々なものがありますが、国内はもちろんのこと、海外に対しても広く発信していこうと思っています。現在、すでにいくつかの新規事業案件、M&A案件が具体的に動いています。
松林 カリスマ経営者のトップダウン経営から、パート社員までが自由にアイデアを出して会社を動かす組織へと、ここ数年で劇的に変わりました。延田社長のお話を聞けてよかったです。パチンコ事業における今後の5年後の展望をお教えください。
延田 業界全体について言えば、以前のような右肩上がりになる可能性はないと思うので、これからも決して楽には進まないでしょう。ただし、産業がなくなるわけではないし、地域1番店は勝ち残れますから、それぞれの地域でお客様に支持される1番店を増やしていきます。そして、慎重に物件を選びながらも、少しずつ出店を続けていく方針です。
松林 最後に、好きな言葉もしくは座右の銘をお教えください。
延田 「一期一会」です。すべての出会いには意味があると思っていますから、それを大切にしています。新規事業はまさに、人との出会いの縁から生まれてきました。パチンコ以外のノウハウがなかった当社が、今さまざまな事業を展開しているのは、今まで出会った人たちに助けられているからです。
松林 本日はありがとうございました。
>>> Part 1 はこちら
>>> Part 2 はこちら



