主体性を引き出す人事改革
評価・研修制度を再設計
「123」の屋号で関西を中心に69店舗を展開する延田エンタープライズは2022年1月に、従来から区分していた店舗でのホール業務、事務所業務の統合をきっかけに人事制度を刷新し評価を明確化。社員が自ら考え、成長を望んで自ら行動することを後押しする人事施策を推進している。取材=パック・エックス

株式会社延田エンタープライズ 執行役員 竹原範人 人事部長
課題であった「休日数」の見直し
現状、当社の採用活動は順調ですが、近い将来、苦戦を強いられるかもしれないと考えていました。その理由のひとつが休日数です。業界平均は月7.7日に対し、当社は月8日と平均を上回っていますが、業界大手には月9日の企業もあります。当社への応募は、もはや業界希望者のみならず、サービス業全体、他業界と併願している方が多く、少ない月間休日数は課題であると認識していました。
これらを踏まえ、来年度からは「月間休日9日、年間休日は113日(108日+法定有給5日)」に改訂することにしました。現在その実現に向け、店舗運営の更なる効率化を進めている最中です。店舗毎の基準人員数を実稼働や稼働予測を加味したものに設定しなおし、より実態に即した人員配置にしていきます。
ボトムアップ型組織への転換
当社では2022年度以前、店舗社員の働き方を接客やホール運営を担う「ホール業務」と、金銭管理や事務手続きを担う「事務所業務」に分け、それぞれの領域のスペシャリストが集う強い店舗として発展してきました。しかし近年、「スペシャリストも必要だが、ゼネラリスト(マルチタスクに対応できる)も必要ではないか」という議論がはじまり、2022年度には2つの業務を統合し、分かれていた評価項目も刷新しました。
また、これと同タイミングで「ボトムアップ型組織への転換」を明示いたしました。企業には、トップダウンで意思決定し社員がそれをスピーディーに実行することが必要な時期もあります。しかし、当社にとって今は、下から上へと提案を上げてもらうことが重要だと考えています。
店舗役職者には研修を通じて、部下の主体性を引き出すような接し方を身につけてもらっています。例えば、部下から「これはどうすればいいでしょう?」と相談があった際、「浅い考えでもいいから、まず、あなたの考えを聞かせてほしい」と返します。部下は次には自分の考えをもって提案してくる。その提案を肯定的に受けとめた上でアドバイスを行う。これを繰り返すことで、社員一人ひとりの主体性、ひいてはチーム・組織全体のボトムアップ風土醸成に繋がっていっています。
研修は「テーマ別」「挙手式」へ
当社は実力主義の人事制度を展開しており、昇進や昇格に年功序列的な側面は一切ありません。チャンスは年に複数回あり、どうすれば叶うのかも明確に示しています。かといって同じ立ち位置で足踏みしている社員を厳しく非難することはありません。なぜなら上昇志向の強弱は人によって異なり、また無理をさせることで焦って自分のペースを乱してしまうことはよくないと考えているからです。ただし、決してスローペースやマイペースを推奨している訳ではありません。あくまでも自身のキャパシティ等を自己認識してもらった上で、自身のタイミングで昇進や昇格にチャレンジしてほしいと伝えています。
研修のありかたも大幅に変えました。かつては、新任役職者研修など、会社が対象者を指定して研修を提供する「階層制」が中心でしたが、現在、研修の半分はテーマ別で、会社指名でなく「挙手制」を導入しています。市場のニーズや現場サイドのニーズを捉え、人事部が研修を企画し、参加希望者を募ります。2022年の評価項目の刷新によって、各社員が自身の課題を明確化できるようになったため、社員が自分に足りない能力、より伸ばしたい能力に絞って研修を受講できる制度に変更したのです。受講するもしないも、本人の主体性に任せています。
研修は基本的に1日で完結しますが、事前課題や事後レポートの提出を義務付けています。あくまでも本人が主体的に参加しているものなので、これくらいはポジティブにこなしてもらいたいと考えています。導入当初は参加のハードルを下げていましたが、今はそうはいきません(笑)。また、この研修の大部分は、あえて集合型で実施しています。オンライン研修より会社の負担はありますが、主体性が高い人材同士が顔を合わせて共創することで、大きな学びや成長につながり、階層別以上の費用対効果が得られると考えています。「当社は人が財産」を謳っている以上、人材への投資を惜しむつもりはありません。
新たな事業創造を担う人材
当社は現在パチンコホール69店舗を展開していますが、大半は関西を中心とした西日本で、関東は3店舗です。しかし今年5月に東京支社を開設しました。これは当グループが今後更なる成長を実現するための重点戦略であり、その役割は「事業開発の強化」「金融機関様との取引強化」「優秀な人材の獲得」です。とりわけ「事業開発の強化」については、当グループが飛躍的成長を描く上で最も重要な取り組みであり、遊技場事業とともに将来の基幹事業と位置づけ、新たな収益事業の創造を推進していきます。
今後ますます、主体性を発揮できる人材、そしてボトムアップの担い手になる人材が、必要となってきます。優秀な人材が当社に集い、社内に新風を吹き起こし続けてくれると、周囲がそれに共鳴し、真に一体感がある組織体制や活力ある風土が醸成されます。まだ道半ばではありますが、必ず実現できると信じ、人事戦略を着実に実行していきたいと考えています。[END]
※本記事は『Answers』2025年秋号の転載です。記事内容は取材時点のものです。
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