文=畠中 太一(共闘ラボ)
#1 新台で業績を上げるには、何をすればいいのか?
結論から書きます。単一の機種の稼働を当てにいくのをやめることです。どの機種が当たるかを正確に言い当てることはできません。しかし、「どの機種に何台割り当てるか」という購入台数の配分は、店舗側で自由にコントロールできます。つまり業績向上のヒントはそこにあります。判断基準を変えるだけで、年間の営業成績は大きく変わります。なぜそう言えるのか、データをもとに順を追って説明します。
#2 評価がいちばん高い機種でも4割は動かない
期待して大量導入した機種が動かない。逆に、様子見で少なめに入れた機種が予想外に動く――。毎年どの店舗でも繰り返されている光景でしょう。ここでいう「動いた」は好稼働だったという意味で、その機種の1台あたりのアウト(打込量)が、全国の全パチンコ機平均を上回っている状態と本稿では定義します。その状態が導入から3カ月続けば、主力(ヒット機)と定義しましょう。
弊社が蓄積しているデータベースの中から、2024年3月から2026年5月に全国導入され、すでに導入後の稼働実績が確定しているパチンコ185機種を対象に検証を行いました。弊社・共闘ラボが開発したAI「LABI(ラビ)」を用いて事前の情報をもとに、この185機種を4段階でランク分けしました。つまり、導入前の時点での稼働予測です。その結果、もっとも評価が高かった最上位ランク(3カ月以上、平均稼働を維持するとAIが予測)の14機種のうち、実際に3カ月以上平均稼働を保てたのは57%にとどまりました。つまり、4割以上は「ヒット機」と言える実績に届かなかったのです。
このAIツール「LABI」は、私自身が長年ホール現場で培って実践してきた機種選定のノウハウをロジック化したものです。機械のスペックと全国の週ごとの実績を突き合わせて、導入前に、「全国平均の稼働を何週間上回り続けられるか」を予測値として算出します。個々の機種ごとに「3カ月以上か・以下か」を事前に予測する精度としては、現状がほぼ限界値だと考えています。これは他社製のAIツールや別の分析手法を用いても変わらないでしょう。

理由は明確です。パチンコの場合、新台が『動くか・動かないか』の差を決めている要因のうち、事前にわかる情報(スペックや演出、版権の魅力度など)が占める割合は2割程度にすぎないからです。パチスロはさらに低く、1割ほどしかありません。残りは、導入前には見えないところにあります。
#3 上げられるのは、上位を絞り込む精度
ただし、個別の機種を完璧に言い当てることはできなくても、劇的に高められる別の精度があるのです。それは、「確率の高低」で仕分けグループ化する精度で、これは極めて高いレベルで実現できます。検証した185機種を、事前の予測評価(週数)に基づいて4つのグループに分類した結果が以下の表です。

最上位グループ(AIが3カ月以上動くと予測した機種群)と最下位グループを比べると、3カ月以上平均稼働を維持した割合には10倍以上の開きが生じています。平均稼働を保てた期間(中央値)で見ても結果は一目瞭然です。AIが「高い」と評価した機種が動いた期間の中央値は17週(約4カ月)におよぶのに対し、「低い」機種はわずか6週(約1カ月半)でした。
今度は、同じ185機種の4グループを「早期に失速した機種の割合」という逆の視点から見てみます。平均稼働を2カ月間維持できなかった機種の割合は、「評価が高い」群で14%(14機種中2機種)、「やや高い」群で38%、「普通」群で49%、「低い」群で78%です。上から見ても下から見ても、順番は変わりません。
1機種ずつの当たり外れは、人間にもAIにも読み切れません。しかし「早期に稼働が落ちる機種を、『3カ月以上、平均稼働を保てる機種』と見誤らない」という精度、いわば「地雷を踏まない可能性」は、十分に高めることができます。過去2年間の実績データは、その事実を明確に示しています。

#4 なぜ上位機種を絞り込めるのか
AI「LABI」が行っている処理は、構造としては極めてシンプルです。すべての新台を、まったく同じ基準・同じ計算式でフラットに測定しているだけです。パチンコにはパチンコの基準、パチスロにはパチスロの基準を定め、それを当てはめます。(2026年9月時点で393機種に適用済み)
実は、人間の判断ではここがブレてしまうのです。話題の機種は時間をかけて評価検討し、そうでない機種は流す。限られた時間で業務を流す以上、仕方のないことです。ただ、その瞬間に機種ごとの「評価の物差し」が変わってしまいます。私は自身の経験を元に、「LABI」は評価の物差しを変えないように作りました。ですから、「AIでも何週動くかは正確に予測できない」とは言うものの、機種によって物差しが変わることはありません。人の判断とAIの差は、精度よりもこのブレの無さにあります。
同じ物差しで一定の基準に従って評価しても、個々の機種ごとに見れば予測の誤差は上にも下にも出ます。予想よりも長く動くこともあれば、短いこともある。しかし、まとめて「群(グループ)」で見ると、個別機種の誤差は打ち消し合い、群と群の実力差だけがはっきりと残ります。個別機種の未来の予測精度を上げられる可能性はほぼありませんが、AIがグループ分けしたグループ間の順番はかなり正確に読めるのです。これは、確率・統計の基本的な性質ですので、これを踏まえて「どうするのか」を考えることが重要なのです。
では、どういう考え方を持つべきなのか? それは、「当たる1機種を探すのをやめて、評価が高い機種に台数を寄せる」です。そのための手順をパート2でご説明します。



