文=畠中 太一(共闘ラボ)
前回の原稿で、AIで過去の185機種の稼働予測(4段階)を行い、最上位ランクから最下位ランクにグループ分けし、各グループの「ヒット機」の割合をご紹介しました。個々の機種の稼働予測には限界がありますが、事前予測によって分類したカテゴリー間には、明確な実績差があることをご説明しました。今回は、それを踏まえた業績を上げる考え方をご説明します。
#5 購入台数の決め方
新台の稼働予測をもとに業績を上げる購入方法をご説明します。新台10台の購入枠を仮定します。ここでいう10台とは、自店で使う台数の枠です。
① お付き合いの分を先に外す
お付き合いで買う分を、10台のうち2割、2台とします(平均値)。残る8台が、自分で選べる台数です。これだけで、会議の議題が「買うか買わないか」から「8台をどこに何台入れるか」に変わります。
② 8台を、評価が高い機種に寄せる
やることは単純です。事前評価が高い機種を多めに入れ、評価が低い機種は入れないことです。たとえば8台購入なら、評価が「高い」1機種に4台、「やや高い」の2機種に2台ずつ、評価が低い機種は0台です(※評価が「高い」機種が2機種以上同時期にリリースされることは非常に稀です)。重要なのは、評価が「高い」1機種に全予算を集中させないことです。予測が当たった場合の売上を最大化するのではなく、外したときにもお客様を逃がさない形にするためです。
また、8台を各評価グループ均等に散らしません。理由は、先ほど説明した通り「3カ月以上平均稼働を維持する割合」はグループ間で最大で10倍の差があります。1機種ずつは当たらなくても、評価グループごとの差は歴然として存在しますから、低評価の機種を買わないことです。評価が高い機種に厚く入れておけば、途中で何度か外しても、年間の合計では差が出ます。当たり前のことですが、これを「数字上の原理原則」として認識できているかどうかが重要です。

③ 使う台数に、売却する台数を足す
長く動く機種は、中古相場も高く推移します。そこで、3台使う予定の機種なら、5台買います。2台は稼働とは関係なく、中古機相場が高いうちに売るのです。1台あたり数万円でも、年間で積み上げればかなりの額になります。
この2台は、売るための台なので、さきほどの10台の枠の外です。稼働で回収する額と、売却で回収する額は別勘定です。使う台数だけで買っていては、「売却益で稼ぐ」という発想は出てきません。すべてが100%の精度で当たるわけではありません。ただ、仮に読みが7割当たるなら、売却益も見込みの7割は残ります。予測を外した3割の機種にも中古機としての値は付くので、実際には損失はさほど大きくならない計算です。
#6 物差しを変えないことは難しい
購入台数を決める作業の中で、悩ましいのが、「予測が外れると、物差しを変えたくなる」という人間の心理です。「Lからくりサーカス2がこけた。だから次の同じメーカーは慎重に」「東京喰種が当たった。だから同じ路線なら大丈夫」など。人は直前の結果を強く記憶します。だから次の機種を評価するときにフィルターがかかります。それ自体は悪くありません。問題は、そのたびに物差しが変わることです。
物差しが変われば、評価が高い機種と低い機種の区別そのものが崩れます。区別が崩れれば、2も3も根拠を失います。同じ物差しで測り続けることが、この手順の前提です。では、どうやって固定するか。LABIで決めているのは次の3つです。

①評価式を書き換えない
式を引き直すのは、機種数がまとまってたまった時だけです。引き直したあとも、それ以前に評価した機種は当時の式のまま据え置きます。過去に使った式は、係数を書き込んだ形でそのまま残してあります。前回引き直したときは、パチンコで4機種に1機種、パチスロで2機種に1機種の評価表記が動きました。式を替えて全機種を計算し直せば、去年の判断が今年の物差しで書き換わります。それでは過去と比べられません。
②一度出した評価を、後から書き換えない
外れた機種の反省を、過去の評価に遡って足すことはしません。基準を変えるときは版(バージョン)を上げて、そこから先の機種にだけ適用します。ここは分けて考えています。動かさないのは物差しです。測った数字のほうは、新しい実績が入るたびに更新します。物差しを変えるのと、同じ物差しで測り直すのは、別のことです。
③どの版の物差しで、いつ測ったかを毎回残す
後から誰でも検証できる状態にしておきます。AIも、放っておくと物差しが動きます。同じページを読み直すと拾ってくる範囲が毎回変わりますし、取得に失敗した情報をそれらしく埋めてしまうこともあります。LABIも初期にはそういうことがあったため、修正しました。現在は、機械で取れるものはプログラムで取り、AIには分類だけをさせています。考えさせる工程を減らすほど、同じ入力から同じ答えが返ります。「AIだから物差しが固定される」わけではありません。LABIは物差しが変らないように作っているから、物差しが固定されているのです。
#7 AIの予測にも同じ課題がある
AIを使った新台評価は、いくつも出ています。そのうえで、使い続けるときに落ちやすい穴がひとつあります。「予測が外れる。原因を分析する。その要因を次の評価に足す」。これは一見まともな改善ですが、物差しを途中で変えているのと同じです。AIを強みにできるのは、どの機種も同じ基準で測れる場合です。後知恵をその都度足していけば、その強みを自分で消してしまいます。私がLABIを作るときに決めたのが、この足し算をしないことでした。外れた機種は記録に残します。ただし、次の評価式には足しません。足すのは、機種数がたまって式そのものを引き直すときだけです。
最後に整理いたします。新台で業績を上げるには、当てにいくのをやめることです。やることは3つです。
1 お付き合い分を外して、自分で選べる台数を確定する
2 その台数を、評価が高い機種に寄せて購入する
3 使う台数とは別に、売る前提の台数を購入する
どれも、当たる機種を探す作業ではありません。購入台数を決める作業です。AIによる事前評価は、その台数を決めるための物差しなのです。



