挑戦に満ちた時間を過ごそう。ココロのフリコ揺らそうぜ。|次世代リーダーのためのマーケティング論

文=吉田真晃(パチンコ営業力向上コンサルタント)

これまで私は、営業力を「目標を達成する力、そのために必要なスキルの集合体」と定義してきました。目標を立て、現状を分析し、未来を予測する。仮説を立て、戦略を考え、行動する。そして結果を検証し、次の一手につなげる。

では、なぜ営業力を高める必要があるのでしょうか。もちろん、業績を上げるためです。しかし、この連載の最終回だからこそ、今回はその先にある「仕事」について書いてみたいと思います。

経営幹部の方から「店長が自ら考えず、指示待ちになっている」という相談を受けることがあります。会社の仕組みが整備される一方で、店長がその仕組みの一部となり、与えられたことをこなすことが仕事になっていく。結果が出なければ、会社や環境のせいにしてしまう──。私は、そんな組織で継続的に業績を上げていくことは難しいと考えています。

店長自身が目標達成の主体となり、自ら考え、判断し、少し高い目標を掲げて挑戦するから、「どうすれば達成できるのか」と考える。今までとは違うことに挑戦する。失敗することもあるけれど、もう一度挑戦する。そこには負荷がかかりますが、「成長痛」を伴って変化したときにこそ、営業力が高まるのです。

そして、店長がこのように挑戦しない組織では、次世代のリーダーが育ちません。挑戦する上司の姿を見て、部下もまた挑戦する。その連鎖が組織を強くしていくからです。

皆様ご存じのように、パチンコというビジネスでは日常的に「新台導入」という非常に大きな投資が行われています。これは、お客様がパチンコというレジャーに、常に新しい刺激を求めているからだと私は考えています。「常に新しい刺激を求める顧客」×「変化を好まない幹部」という組み合わせで、お客様から支持され続ける店を作ることは至難の業なのです。幹部自身が変化を楽しみ、新しいことに挑戦する。それは、この商売に携わるリーダーにとって、とても大切な姿勢だと思います。

先日、弊社がご支援しているホールのひとつが、8月8日の県内稼働率ランキングで1位になりました。その会社のオーナーは、数字への意識が非常に高い方ですが、一過性の数字を追うことを嫌い「自分たちらしく、お客様から評価していただくこと」に力点を置いています。スタッフが一丸となってひとつのミッションに向かう。その姿勢や意識をとても大切にしているのです。

県内1位という目標を達成した瞬間、ランキングの画像と取り組んだ内容が、次々とグループLINEに上がってきました。「やったぞ!」「この喜びを仲間や上司と共有したい」そんな思いが伝わってきました。私は、その嬉しい報告を見ながら、「豊かな仕事時間を過ごされているな」と思いました。

仕事は、人生の中で何十年も付き合っていくものです。仲間とひとつの目標に向かい、本気で挑戦する。思うようにいかないときには一緒に悩み、考える。そして成し遂げた瞬間には、一緒になって喜ぶ。そんな時間をたくさん過ごせる人は、ビジネスマンとして格好いい。そして、そんな時間を仲間に提供できるリーダーに、人はついていく。私はそう思います。

私自身にも、忘れられない経験があります。13年前、ホール企業を退社した私は、人生で初めてセミナー講師の仕事をいただきました。会場には多くの経営者が集まります。講師の経験などなかった私は、スティーブ・ジョブズのプレゼンについて書かれた『驚異のプレゼン』を読みました。あたかも自然に話し、観客を沸かせているジョブズ。しかし実際には、水を飲むタイミングまで計算し、何度も練習を重ねていることを知りました。

そして、「経営者は何に興味をお持ちなのだろうか」「自分らしさとは何だろう」と考えながらスライドをつくり、カラオケBOXで何度も一人で練習しました。

そして迎えた当日。すべてを話し終え、「ご清聴ありがとうございました」と深々と頭を下げました。顔を上げると、私の前には長い名刺交換の列ができていました。当時の私は会社を立ち上げる前の無職。あたかも社名のように「MUSYOKU」と書いた名刺を作り、配りました。そこから複数の契約をいただき、私は起業しました。

13年経った今でも、あの日のことを鮮明に覚えています。仕事をしていれば、苦しいときがあります。自信を失うこともあります。そんなとき、「あのとき、自分はやれたじゃないか」と、過去の自分に励まされます。そんな経験は、もう一歩前へ踏み出すとき、背中を押してくれます。仕事人生の中で少しずつ蓄えられる財産です。私は、こうした経験を「心の財産」と呼んでいます。

若い頃は初めての経験ばかりでした。初めて異性とデートした。友人と旅行した。親友と大喧嘩した。嬉しかったことも、悔しかったことも、強烈に心に残る。一年を振り返れば、たくさんの出来事を思い出せました。

大人になると経験が増え、賢くなります。「これくらいやっておけば大丈夫」「そこまで無理しても得はない」。失敗しない方法を覚え、大きな失敗は減ります。しかし同時に、挑戦する回数まで減ってはいないでしょうか。

知っている一年を、知っているやり方で過ごす。すると、一年を振り返ったとき、心に強く残っている出来事が少ない。これが、年齢を重ねると一年を早く感じるようになるメカニズムでしょう。

私は、そんな仕事人生にはしたくありません。熱い仕事をしたい。皆さんには、「これは自分だから成し遂げられた」と言える仕事をしていただきたい。そしてリーダーなら、仲間にもそんな経験をしてもらいましょう。挑戦し、苦しみ、考え、成し遂げ、誰かに伝えたくなるほど喜ぶ。その経験は、いつかその人を支える「心の財産」になるはずです。

もし、私たちの心の中にも「フリコ」があるとしたら。安心できる場所で、小さく揺らしながら過ごしたいでしょうか。それとも、大きく揺らし、挑戦に満ちた時間を過ごしたいでしょうか。私は、挑戦に満ちた時間を過ごしたい。そして、挑戦する人を応援したい。一人でも多くの人に、豊かな仕事人生を過ごしてほしい。そんな思いを込めて、私は会社を「フリコユラス」と名付けました。そして創業当時、名刺に一つの言葉を入れました。「ココロのフリコ揺らそうぜ。」

この連載を読んでいただいた皆さま、本当にありがとうございました。最後に一つだけ、問いかけて終わりたいと思います。あなたは今、心のフリコを揺らしていますか?

吉田真晃(フリコユラス 代表取締役)


1994年パチンコ企業入社。21歳で最年少店長に昇格し、担当店舗を地域一番店へ育成。20店舗の統括責任者として営業戦略と店長教育を担当した後、2014年に株式会社フリコユラスを設立。これまで300店舗以上を支援。一貫して「人が動けば組織は変わる」をテーマに、経営者の想いを現場の行動へ変え、店長がお店全体を巻き込みながら主体的に動く組織づくりを支援している。研修では知識を教えるのではなく、参加者自身が答えを見つけ、成功体験を積み重ねながら成長していくことを大切にしている。

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