島根県、鳥取県を中心に「ジャンボ」の屋号でパチンコホール8店舗を展開する三栄ジャンボグループ(島根県松江市)。2026年4月に代表取締役に就任した徳田智一氏は、常務だったコロナ禍に、反対する経営陣を説得し、回転すし店2店舗のM&Aに踏み切った。その後、会社はフィットネス、居酒屋、複合カフェ、農業へと事業多角化を進めることになった。多角化の必要性を強く主張してきた徳田社長は、創業家の長男として後継者としての宿命を受け入れつつも、常に「既存のレール」に抗い、「新たな会社のありかた」を模索してきた。
文=田中 剛(Answers 編集長) text by Tanaka Tsuyoshi
──パチンコ事業の、チーム作りや人材育成において特に意識されていることは何でしょうか?
徳田 まず、弊社の考えを整理すると、すべての事業がそれを通じて 「人が元気になるきっかけ」を届けています。お客様が楽しんで、リフレッシュし、また前向きに日常へ戻っていく、そのきっかけのご提供です。そのためには、私たち自身が常に改善、進化、創意、工夫して、心からのおもてなしを届けなければなりませんよね。その時に必要なのが、互いに尊重し、高め合い、共に目的に向かっていく大切で心強い存在、つまり「仲間」です。そういうわけで、「挑戦すること」「仲間を大切にすること」「人間として正しいことを大切にすること」という組織の価値観を統一することを強く意識しています。
──仮に中途採用するとしたら、その方は異なる企業文化で仕事をしてきた方です。バックグラウンドの異なる求職者に対し、採用面接で最も重視して見ている人間性や要素は何でしょうか?
徳田 バックグラウンドが違えども、価値観を統一できればそれが強みになると思います。そういう意味で、採用時には人間性、特に素直さと協調性を重視し面接を行っています。弊社は、「仲間を大切にする」「一緒に成長する」という姿勢を大切にしていますので。

──徳田社長は先輩方や研修、読書を通じて多くのことを吸収されたことと思います。最も響いた言葉、座右の銘があれば教えてください。
徳田 誰の言葉というわけではないのですが、『人生、一度きり』という言葉は、機会あるごとに思い返しています。20代の頃、福岡で一緒に楽しく働いていた先輩が、胃がんが見つかった後、あっという亡くなった体験も大きく影響していると思います。人はいつ死ぬかわかりません。だからこそ、今という時間を尊び、悔いのないよう全てに挑戦してみたいんです。挑戦するためには、この時間をどう過ごすべきか、何を考えるべきか…。『人生、一度きり』という言葉は、そういうことに繋がってきます。
一度しかない人生を、どのように生きたいか
──若い世代は「ワーク・ライフ・バランス」を、「仕事かプライベートか」という二択で捉えるようです。もしも、「より責任ある立場を目指すか、プレッシャーのない現状の立場のまま仕事を続けようか」と気持ちが揺れている社員がいたとします。そんな方に読むことを勧めたい本はありますか?
徳田 質問の答えに合っているかわかりませんが、私が20代後半に生き方に悩んだときに読んだ本、『夜と霧』(著:ヴィクトール・フランクル)をお勧めしたいです。一度しかない人生をどのように生きていくか、人生観、価値観を根本から変えてくれる可能性を秘めた、とても素晴らしい名書です。私は、仕事に対する姿勢や、人生について大きく影響を受けました。
──収容所という絶望的な状況に置かれた人々を観察した記録ですね。コヴィー博士の『7つの習慣』の中でも紹介されていました。
徳田 はい。第二次世界大戦中、ナチスの強制収容所に囚われた心理学者(精神科医)による実体験の記録です。絶望から希望を見出し、その希望や自分を信じて毎日進んでいければ、人生は必ず好転していくと思えます。この本を読めば、自分の進むべき道が明らかになるでしょう。「一度しかない人生を、どのように生きたいか」と考えることによって、悩みへの答えは出ます。そして、人生や働き方に悩んでいる社員さんの成長を待っている人が必ずいる、ということも知っておいてほしいです。

徳田智一(とくだ・ともかず)
1983年8月生まれ。大学卒業後、福岡県のパチンコホール企業で3年間の勤務を経て、2009年に三栄に入社。2026年4月に代表取締役に就任。業界団体のMIRAIぱちんこ産業連盟では2025年より青年部会長を務める。


