店舗運営・経営

企業に求められるカスハラ対策 義務化に向けた法整備が進行中

悩める現場の「ミカタ」
企業に求められるカスハラ対策 義務化に向けた法整備が進行中
文 = 坂本勝章(萬・COI 代表)/text by Sakamoto Masaaki

近年、20代アルバイトの定着率が低い一因は、カスハラにあると言われています。カスハラはもちろんカスタマーハラスメント(Customer harassment)の略で、和製英語。顧客などによる悪質な嫌がらせや迷惑行為を指します。現場の若い子から「クレームをつけてくる客が怖い」という話を伺うことがありますが、そういった客の言動すべてがカスハラに該当するわけではありません。

クレーマーはお客様ではない 時には毅然とした態度も必要

厚生労働省は昨年12月、労働政策審議会の雇用環境・均等分科会にてカスハラ対策を企業に義務づける案を示し、了承されました。カスハラの定義は、「顧客、取引先、施設利用者その他の利害関係者が行うこと」「社会通念上相当な範囲を超えた言動であること」「労働者の就業環境が害されること」の3つを満たすこととなっています。

法整備も進められており、2026年度中には施行される見通しです。カスハラは現在でも大きな問題ですから、施行時に対応するのではなく、できるだけ早めに着手するべきでしょう。

具体的にどんなことが義務づけられるかというと、「事業主の方針等の明確化およびその周知・啓発」「相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備」「カスハラに係る事後の迅速かつ適切な対応」などのようです。確定事項ではないので今すぐ細部まで決める必要はありませんが、大枠を決めておけばお客様からのクレームに対応しやすくなります。

例えば、過去にあった事例とその時の対応を資料にまとめ全スタッフに共有するだけで、いざという時に役に立つはずです。「台をキープしていた・いないというお客様同士のトラブルでスタッフが呼ばれ、どちらの肩を持ってももう一方からキレられた」とか、「ホッパーエラーで修理していたら『早くしろ。いつまで待たせるんだ』と何度も言われた」といったトラブルに、「防犯カメラの映像を確認して説明したら納得してもらえた」や「上司を呼んで2人がかりでクレームを聞いていたら冷静になってもらえた」などの対応を記しておくのです。

さらに踏み込んで、トラブルが起きた際のフローチャートや対応マニュアルを作成しておくとより良いでしょう。注意すべき点として、「自分だけでは決めかねると説明した上で上司を呼びに行く」「金銭の要求には絶対に応じない」などを列挙しておいても良いかもしれません。

また、カスハラに遭ってしまった従業員を守ることも重要です。スタッフに何らかの落ち度があってお客様が文句を言ってきた場合、当該スタッフに任せっきりにしてクレームがエスカレートしていき、土下座の強要といったカスハラに発展したとしたら、会社は安全配慮義務違反に該当して責任を問われる可能性があります。そのスタッフがうつ病になってしまったなら、損害賠償請求を受けることになりかねません。企業のイメージダウンも避けられないでしょう。

こういう事態を防ぐためにも、カスハラのロープレや研修は重要と言えます。さらに、起きてしまった後のことを考え、相談窓口の設置や担当者を決めておくとベターです。

「お客様は神様です」とよく言われますが、元々は大物歌手の故・三波春夫が「神前で祈るように雑念を払い、完璧な芸を披露する」という心構えを表したもの。「客は神様で、従業員より偉い」という意味ではありません。物を投げつけたり、SNSで拡散するぞと脅したりする人は、すでに「お客様」ではないので、「それはカスハラに該当しますから、警察と弁護士に相談させていただきます」と毅然な態度で対応する必要もあるでしょう。


■ 坂本勝章
萬・COI代表。国家資格キャリアコンサルタント。大手エンタメ企業、ホール企業を経て、2015年に萬・COIを独立開業。組織や人事管理、労働環境、ハラスメント窓口などの改善支援や外部顧問、研修講師として業種を問わず幅広く活躍している。

コメント

この記事へのコメントはありません。

日本語が含まれないコメントは表示できません。

関連記事

新着記事
会員限定
おすすめ
PAGE TOP
ログイン 会員登録
会員登録