闘う経済アナリストがわかりやすく解説
老後資金不安を解消するには まず具体的な数字を把握する
文 = 森永康平(マネネ CEO)/ text by Morinaga Kohei
2022年4月から高校でも金融教育が始まった。最近では昨年から始まった新NISAを契機に、20代でも既に投資をして将来のための資産形成をしている人をよく見かける。一方で、30代~40代の方から私のもとに寄せられる質問の多くは、「老後資金をどのように準備すればよいか」というものだ。日本では金融リテラシーの格差が年代によって開いている可能性がある。
私のもとに老後不安の相談する方に何が不安なのかを聞くと、特に具体的な話は出てこず、なんとなくぼんやりとした不安を抱えているとの回答が多い。そこで、毎月の手取りの収入や固定費、変動費をひとつずつヒアリングしながら、将来設計のプランニングをしようとすると、驚くことに自分の毎月の収支をしっかりと把握している人があまりいないのだ。それでは相談に乗りようがないので、次回の相談までに全てのデータを持ってきてもらい改めて将来設計のプランニングをすると、人によっては想像していたよりも悪い結果(すなわちお金の不足が明らかになる)が出てしまうこともある。
しかし、悪い結果が出ても、相談者の顔は意外と明るい。なぜかというと、彼らは相談に来た時はぼんやりとした不安に襲われており、その原因が分からず悶々としていた。それが悪い状況が明らかになると同時に、「老後までにいくら準備しなければいけない」という具体的な目標ができ、「それを達成するために何をするか」という前向きな姿勢に切り替えられるからだ。
では、老後資金としていくら必要なのだろうか。人によって経済条件が違うため、ここでは国が出しているデータを基に算出していく。
65歳に退職し、90歳まで生きるとしよう。生命保険文化センター、総務省統計局、人事院がそれぞれ公表しているデータによると、高齢夫婦無職世帯がゆとりある老後生活を暮らすためには毎月38万円必要だという。そうすると、38万円×12か月×25年で必要資金は1億1,400万円となる。平均的な年金支給額は22万円/月となっているので、同様に計算すると6,600万円。そして、中小企業の定年退職者(大卒者)の退職金は約1,092万円というデータ(令和3年 賃金事情等総合調査)を足し算、引き算すると、夫婦2人で約3,700万円が老後資金として必要という結果になる。算出に使っているデータも手法も違うが、一時期、世の中を騒がせた「老後2,000万円問題」はけっして大げさな金額ではなさそうだ。
どのようにして、退職するまでに3,700万円近くの金額を貯めるのか。方法はいくつかある。1つ目は収入を増やすことだ。いまの職場で昇給・昇格を狙うことや、副業で収入源を増やす。または今よりも条件がいい職場に転職することも視野に入れる必要があるだろう。
2つ目は節約だ。不要な支払いはやめるべく、携帯代や電気代のプランの見直しなどが必要だろう。
そして、3つ目が投資だ。収入を増やして、支出を減らすことで、余剰資金が捻出できるようになる。それを投資に回すのだ。物価が上がる時代、つまりインフレになると、余剰資金を銀行に預けておくと、毎年の物価上昇率分だけ預金の価値は目減りしてしまう。
「投資と言ってもやり方が分からない」という方もいるだろう。そのような時こそ、昨年から始まった新NISAの「つみたて投資枠」を活用すべきだ。手数料が低い、株価指数に連動するインデックスファンドを無理のない金額で長期に積み立てていけばよい。短期的な上下は気にせず、長期で見ることが大事だ。

■ 森永康平
経済アナリスト、株式会社マネネCEO。証券会社、運用会社にてアナリストとして株式市場や経済のリサーチ業務に従事。2018年6月、金融教育ベンチャーのマネネを創業。『スタグフレーションの時代』(宝島社新書)、父・森永卓郎との共著『親子ゼニ問答』(角川新書)など著書多数。
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