愛知、三重を中心に25店舗を展開するキング観光は、次世代を担う人材の育成に本腰を入れ始めた。2025年1月に執行役員統括部長に就任し、総務、人事、経理を統括する立場となった神津忠隆氏に、現在の人事課題と、それに対する具体的な取り組みについて話を伺った。〔文中敬称略〕 取材=パック・エックス
次の世代へのバトンタッチの準備
人事として重要な課題は、会社の将来を考えて、次の世代へのバトンタッチの準備を始めなければならないということです。これは緊急ではないけれど重要なことで、その着手は急務だと感じています。現状、社長、副社長から店長までの幹部層はしっかりそろっていると自負しています。しかし、10年後にはどうか。現在の店長のほぼ全員が50歳以上になります。そしてそのときには、店長としてではなく、より経営に近い位置での役割を担わなければなりません。そして現在の主任層には店長として営業をけん引してもらいたい。つまり、どの階層の育成も必要なのです。人の育成には時間がかかるので、いまから始めないと将来が危ういという危機感が、少しずつ社内で共有され始めたところです。
とはいえ、仕事の多くの時間を占めているのは採用活動です。店舗運営には人員が不可欠ですから、2027年卒の新卒採用には、26卒の1.7倍の人材を採用するために予算も1.7倍にして取り組んでいます。また、この業界に限らず多額の費用をかけて新卒者を採用しても、3割、4割が1年以内に辞めてしまう年もあります。そこで弊社では、従来からおこなっていた入社1年目、2年目の社員のフォローアップを25年から強化しています。そのためのリソースも増やし、私が兼任していた人事部長ポストを、9月から元営業部長の廣に任せています。彼の主導で研修を充実させていく計画です。

株式会社キング観光 執行役員 神津忠隆 統括部長
人間力を高めることで会社が成長する
若年層の研修内容は、パチンコ店舗の業績数字に直結する営業関連のものに加えて、「人間力」を高めることに重点を置いたものを拡充します。起きている出来事への受け止め方、考え方の幅を広げ、社会人としての成長をサポートします。人間力が高まることによって後輩・部下との接し方にも変化が生まれ、若年層の離職率も下がると期待しています。
店長や次期店長といった、将来の経営幹部候補層の育成においても同様で、人間力を高めることに重きを置きます。店長の人間力が高まれば、若年層の離職率も下がります。それを高めてもらうためのアプローチが異なるだけです。店長や中堅社員には、リーダーシップやコミュニケーションの研修をしつつ、「会社には人が大切だ」という当事者意識を高めてもらいます。

集合研修と並行しておこなっていることのひとつに読書があります。私が就任してすぐに店長クラスの25人に、『1日1話、読めば心が熱くなる365人の生き方の教科書』という本を配りました。これは、各分野の一流と言われる方々の考え方に触れられるだけでなく、1日に1ページだけ読めばいい作りになっているため読むハードルが低いのです。考え方の幅を広げてもらえるはずですし、私と店長たち、そして店長たちどうしで共通言語を持てることが大きなメリットだと思います。とはいえ、ただ配っただけでは読まない店長もいるでしょうから、定期的に「今日のページ、読んだか?」と声をかけて感想を聞くようにしています。手間であっても、私が店長たちに個別に語りかけ続けることが重要だと思っています。
短い時間であっても、毎日、行動を振り返ることが大事だと思います。ですから、24年から企業理念、社訓、行動指針を記載した四つ折りのカードの制作を始めました。これが25年の春にできあがりました。企業理念などを変えたわけではなく表現をわかりやすく整理して、携帯しやすい形状に刷新し、その内容を朝礼で唱和しています。
制度に関しては、コンサルタントの協力も得ながらいろいろ整備を進めています。一例を挙げれば、行動指針に沿った行動を評価し、賃金に連動させる仕組みも検討中です。

こうづ・ただたか 1996年入社、1999年にキング観光サウザンド津店店長就任。2023年に経理部長。2025年1月に総務・人事・経理を統括する執行役員に昇進。世代交代を見据えた組織の強化に取り組む。
スタッフは集客のための戦力
人間力を高める狙いは、それが接客力の向上にもつながるからです。いま、各台計数機やスマート遊技機、セルフカウンターの導入で、スタッフとお客様の接点が少なくなっていますが、まだまだスタッフの介在が必要とされる場面はあります。スタッフは作業員ではなく、集客のための戦力であってほしい。つまりお客様が再び来店したくなるような行動をしてほしい。お客様をよく観察し、積極的に接客や提案をすることで、お客様に「このお店は自分にとって居心地がいい」と感じてもらう。そうした仕事ができるスタッフを育てていきたいです。
経営資源は有限ですから、人材育成の充実を図れば採用が手薄になったかもしれません。しかし弊社ではその心配はありません。経営陣の理解があり、採用予算を増やしてもらっています。人事部門の人員も増やしてもらいました。自社だけで手が回らない部分はアウトソースしています。人材育成を強化し社員が人間として成長すれば、親御さんや友人から「キング観光で働き始めたら成長したね」と言われるようになるでしょう。そうした良い口コミこそが、強力な採用ツールになると信じています。私の立場からすれば、親御さんから「自分の子どもを就職させたい会社」と評価してもらえたら、こんなに嬉しいことはありません。
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