パチンコ業界の人事課題に「唯一の正解」はない。ホール企業6社が選んだ三者三様の「生存戦略」を読み解く
「採用難」「若手の早期離職」「管理職の高齢化」――。これらはもはや一過性の悩みではなく、パチンコ業界全体が直面している構造的な地殻変動だ。「では、どうすればいいのか?」。この問いに対し、業界を牽引するホール企業6社の人事トップが出した答えは、驚くほど対照的だった。徹底的な「実利」で惹きつけるのか、若者の「感性」に寄り添うのか、それとも泥臭く「理念」で結びつくのか。各社のインタビューから見えてきた戦略の分岐点を、3つの方向性(アプローチ)に整理した。自社のフェーズに合うのはどの道か、比較検討の材料としてほしい。
【アプローチ1】組織構造の刷新(ガバナンス改革)
狙い:生産性の最大化・意思決定の高速化
旧来の年功序列や縦割り組織を破壊し、成果とスピードを最優先する「筋肉質」な組織への転換を図る動きだ。
■アンダーツリー:[実力主義への回帰]
「店長から本社へ」の配置転換で意図的にポストを空け、若手の昇進機会を創出。さらに定期昇給を一律廃止し、成果がダイレクトに給与へ反映される「報酬の透明性」を徹底した。
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■玉屋:[階層のフラット化]
部長・課長といった「役職」そのものを撤廃。「さん付け」呼称とフラットな組織図により、現場の声を経営へ直結させるIT企業並みの意思決定スピードを実現している。
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【アプローチ2】若年層との共生(エンゲージメント向上)
狙い:採用競争力の強化・離職防止
「最近の若者は」と嘆くのではなく、Z世代特有の価値観やライフスタイルを「武器」として取り込む柔軟なスタイルだ。
■延田エンタープライズ:[自律的なキャリア形成]
月9日の休日確保は序の口。研修を会社主導から「挙手制」に変え、「やらされる仕事」から「自ら選び取るキャリア」へと意識変革を促している。
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■ユーコーBEX:[多様性の許容と先端技術]
身だしなみ基準緩和「YUKOLORFUL」で個性を開放。さらに店長層へ生成AI研修を実施するなど、変化を恐れず新しいツールを使いこなすリーダー育成へ舵を切った。
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【アプローチ3】理念と人間力の深化(カルチャー醸成)
狙い:求心力の維持・組織の永続性
制度や待遇といったハード面ではなく、目に見えない「帰属意識」や「人間的な器」を育てることで、数値化できない強さを手に入れる。
■アミューズグループ:[M&Aにおける心理的安全性]
M&Aで統合した仲間を「新しい家族」と呼び、時間をかけて理念を浸透させる。失敗を「財産」として称える文化が、挑戦を恐れない現場の土壌を作っている。
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■キング観光:[10年先を見据えた承継]
店長の高齢化という現実に正面から向き合う。「1日1話の読書」という地道な習慣を通じて経営層と現場が共通言語を持ち、次世代へバトンを渡すための「人間力」を練り上げている。
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【編集部まとめ】
6社の戦略に共通するのは、「全方位でいい顔をするのをやめた」という覚悟だ。「厳しくとも稼げる会社」を目指すのか、「自由で働きやすい会社」を作るのか、あるいは「家族のような絆」を求めるのか。人事戦略とは、すなわち「自社が何者であるか」を定義し直すことに他ならない。貴社の進むべき道は、どの潮流に近いだろうか。
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