福岡県を中心に九州・関東に「ユーコーラッキー」「EVO」の屋号でホールを展開するユーコーは、業界全体の採用難という大きな課題に取り組み、柔軟な社風を基盤に現場のレギュレーション変更や待遇改善を進めている。キーワードは「柔軟性」だ。 取材=パック・エックス
若者たちに広がる多様な価値観
人事責任者として一番の課題に思うのはやはり「採用」です。これは私が人事部に異動した2008年から何ら変わっていません。当時、私はアシスタントマネージャー(副店長)でした。当然ながらマネージャー(店長)を目指して日々働いていました。「就職活動中の学生にパチンコホールの仕事の現場の面白さを伝えられる、彼らと近い世代の採用担当者が必要」と会社から異動の打診を受けたときは、とまどいがあったのも事実です。しかし、「会社の将来にとって、幹部候補生の採用は重要な問題」であるとの説得に、「店舗営業と違う形でも会社の成長に貢献できるなら」と決意したことを憶えています。
近年はTikTokやInstagramで会社の雰囲気を発信しながら、コンスタントに新卒15人を採用しています。もちろん容易なことではありません。ユーザーの減少に加え、いまだに残るネガティブなイメージを払拭する必要があるからです。
採用後の「育成」もまた重要な課題ですが、ここは昔と様子が変わってきました。おそらくパチンコ業界に限った話ではないと思いますが、必ずしも管理職への昇進を望まない意識もそのひとつです。
仕事とプライベートに対する熱量の注ぎ方は、個人の価値観によって選択できる時代になりました。こうした変化に対して「育成」というミッションをどう捉え、どういう答えを求めていくのか。もちろん変えるべきは変えるべきでしょう。しかし、譲れない部分もある。管理職に求める変えられない部分、要素があります。この狭間に揺れながら試行錯誤を重ねているのが現状です。

株式会社ユーコーBEX グループ人事部 髙瀨岳彦部長
「時代に合わせて変化する」を実践
弊社の離職率は、全業種平均とほぼ同水準ですが、サービス業全体やパチンコ業界の中では低い水準だと認識しています。その中でも近年は特に離職率が下がりました。要因として「時代に合わせた変化への柔軟な対応」という企業風土が若手社員に伝わりやすくなっていることが考えられます。
そのひとつが2024年4月に「身だしなみ基準の緩和」として導入した「YUKOLORFUL(ユーカラフル)」でした。それまでも多様性(ダイバーシティ)の観点から、たびたび社内で議論に上がっていましたが、なかなか踏み切れずにいました。「お客様からお叱りがあるのではないか」という懸念があったからです。社員のあいだにも賛否両論が渦巻いていました。そんな厚い壁を「やってみよう」という社長のひと言が打ち砕きました。
導入から1カ月後、お客様からのクレームは全くなかったことが調査によって明らかになりました。前提にあったのは、「髪の色やネイルなどの見た目を緩和する代わりに、接客は今まで以上にしっかりおこなう」という意識付けです。そこは各店舗の店長を通じてとくに徹底した経緯があります。現場スタッフからも「会話のきっかけにもなった」と接客力の向上に活かす前向きな声が多く挙がるようになりました。「YUKOLORFUL」は今では採用現場において学生への大きな説得力となっています。
2025年4月、新卒初任給の大幅アップを実施し、同時に既存社員の給与も引き上げました。店舗に新たな省人化設備を導入し業務効率化を図った結果、「店舗の総労働時間」を短縮できたためです。その分を社員に還元しようというオーナーの意向が強く働いていました。
福利厚生に関しては、今の時代に合った、さまざまな年代の社員が各人のニーズにあわせて選べるような制度の導入を予定しています。また、従来の取り組みの中で、女性社員の定着率向上に寄与したのが、結婚・出産後の復職を支える「カンガルーサポート」制度です。時短勤務や早番専門勤務などを可能にするために子育てをしながらでも働きやすい環境整備を目指したものでしたが、2021年の導入以降、利用者はこれまでに13人を超えています。

たかせ・たけひろ 2005年入社。ユーコーラッキー国分店アシスタントマネージャー(副店長)を経 て2008年より人事部で新卒採用を担当。2023年10月より人事部長。 〔注〕ユーコーラッキーグループでは「組織規程」で役職の正式名称を、店長を「マネージャー」、副店長を「アシスタントマネージャー」と規定している。
「変化できる人」が重要になる
店舗の省人化が進む中で、ホールスタッフの役割も変化しています。従来の重労働から解放された代わりに、「人にしかできないこと」がより重要になっています。特に、お客様との接触機会が減っている状況だからこそ、一瞬一瞬に気が抜けません。個人的には、直接お客様に接する瞬間だけではなく、待機中の姿勢や巡回中の表情、些細な気配りなどがお客様にどんな印象を与えるのか、そのウェイトが一段と高まっているように思います。
一方、以前からの取り組みのひとつに社内の接客コンテストがあります。これは本社の人間が各店舗を訪問し、ミステリーショッパー形式で採点し、アルバイトも含めた優秀店舗・優秀スタッフを表彰するものです。また、現在は中断していますが、〈自分がお客として体験した他業種のいいサービス〉を共有し合うプロジェクトを実施していました。これは社員の「観察力」を高めつつ、自分たちの現場に応用できるヒントを探ることが目的になっていました。
中核を担う人材には何よりも「時代の変化に合わせられる柔軟性」が求められていると思います。予測できない変化に対応できる力、自身も変化できる人材こそ必要です。
直近では若手から40代のマネジメント層の中から約10人を選抜して、AI研修を実施しています。ChatGPTのAPI連携など、「AIで何ができるのか」の理解を通じて、営業数値分析や業務効率化への応用を検討していくプロジェクトです。
中核を担える人材とは、周囲を巻き込み変化を起こせる人だと考えます。柔軟な思考と新しい技術を活用する力を養うことも、これからの人材育成には欠かせません。
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