店舗運営・経営

パチンコ店は、「案内人のいないダンジョン」だった 〜パチンコ初心者の娘が語る、『遊技』の高いハードル〜

(前編の続き)*前編はコチラ

パチンコ初心者は「はじめてのおつかい」の子供と同じ

前回、パチンコ初心者である20歳の私の娘が「お目当て台(スマスロ マギアレコード 魔法少女まどか☆マギカ外伝)」を打てずに怒って帰宅したエピソードをお話しました。なぜ、彼女は店内に約1000台もある遊技機に触れることもなく去ることになったのか。

その心理状態をじっくり聞くと、あるテレビ番組の光景が浮かんできました。それは「はじめてのおつかい」です。広い街の中に放り出され、目的(お題)の商品をどこでどう買えばいいのかも分からず、不安で泣き出しそうな子供。道に迷いそうになった時、あるいは「どうすればいいの?」と立ち止まった時に、さりげなく見守り、フォローしてくれる「街の優しい住人」は、何よりも心強い存在です。

パチンコホールに初めて入店する初心者は、まさにこの状態に近いのではないでしょうか。そして、この「街の優しい住人」をパチンコホールに置き換えるなら、それはスタッフの存在に他なりません。パチンコホールでは、遊技の流れや操作方法が初心者にとって直感的に分かりにくい場面が多いのです。これは、知覚されるアフォーダンスが十分に設計されていないことを意味します。その不足を補えるのが、現場のスタッフによる声かけや案内でしょう。スタッフはアフォーダンスそのものではないですが、初心者が遊技の行為可能性を理解するための「媒介」として機能できます。娘の体験を通じて、私はその重要性を改めて実感したのです。

なぜ「設備の親切」は初心者に届かないのか?

最近のパチンコホールは、セルフ化・省人化が驚くほど進んでいます。各台計数機、セルフPOS、自動精算機、スマート遊技機。店舗視点に立てば「さらに便利になって、業務負担や人件費も抑えられる」となるのは当然ですし、実際に多くのユーザーにとって煩わしさを解消する利便性をもたらしています。私のようなパチンコホールの作法や機器の扱いに慣れたユーザーであれば、説明がなくても自分で調べて活用しますし、むしろ「説明を読むのも面倒だから、まずは触って慣れる」のが常道でしょう。

一方で、その「便利」を享受するための前提知識を持たない初心者にとっては、「どう扱えばいいか分からない不安の種」になってしまう側面があるのです。使ったこともないハイテクな設備ほど、失敗した時の恐怖は強いものです。「この機械にお札を入れて、もし動かなかったら?」「間違ったボタンを押して、エラー音が鳴り響いたら?」そんな不安は、説明書だけではなかなか解消されません。どれだけ設備や機器にアフォーダンスを施しても、「心理的ハードル」を下げるには限界があるのではないでしょうか。だからこそ、「言葉を介さずとも、その場にいるだけで安心を与える人」という存在こそが、解決策になると思うのです。

パチンコ初心者の娘とディスカッションしてみた

娘のはじめてのパチンコ体験から数日後、『どうしたらひとりでも遊技でき、楽しめたのか』を本人とディスカッションしてみました。

娘「そもそもお店に入るところから不安で緊張していたから、入り口にスタッフさんがいたら少しは安心できたと思う」

私「ホテルとかのインフォメーションスタッフさんみたいな?」

娘「うーん。ちょっと違うかも。インフォメーションスタッフって、なかに入らないといないと思うから。私みたいな初心者がパチンコ店のなかに入るのは結構勇気いるよ。だから入り口にいてほしい。」

私「おー、なるほど。じゃあ、入り口にスタッフさんがいたら安心できて遊べたのかな?」

娘「いやー、どうだろう。たぶんそれでもまだ、ちょっと不安かも。そもそもどこに『まどかの台(お目当て台)』があるかわからない、探さなきゃいけないのか…みたいな。緊張していたし(笑)。そこまで案内してほしいかな」

私「あ~、ドアマンとかベルボーイか」

娘「たぶん、それ。でも、見つけた時には空いてなかったから、案内されても座れなかったとは思うけど。けど、他の好きなアニメの台があるかどうか、このタイミングで質問できそう。で、他にもわからないこととかあったら、その人に聞けば良さそうだし」

私「おー、いいね。じゃあ、仮にお目当て台に座れていたとして、遊べそうか?」

娘「うーん、まだ難しそう…。お金入れ方わからないし、遊び方わからないし。やっぱ、初心者が最初からひとりでパチンコやるって、無理な気がしてきた…」

私「あきらめるな。がんばれ。ひとりでも、どうすれば打てたのか」

娘「えー、どうしてもひとりなの…。うーん、さっきの案内してくれたスタッフさんとかがしばらく付きっきりで教えてくれたらできるかも。で、ちょっと遊べるようになったら、お店の雰囲気とかにも慣れてきそうだし、大丈夫かもしれない」

私「いいね。ちなみにだけど、店内に機種の島図とか、機種がわかるサイネージとかあったと思うけど、それでもわからなかったの?」

娘「自分の立ってる場所がどこなのかもわからないのに、見たところで分かるはずないじゃん。あれ(島図)、ほぼダンジョンマップだよ」

私「ダンジョンマップか…。言い得て妙だな」

この言葉にハッとしました。地図という情報は、「現在地」を把握できる能力があって初めて機能します。極限の緊張状態にある初心者にとって、多すぎる情報は探索を諦めさせる「ノイズ」でしかない。娘がはじめて体験したパチンコホールの感想は、「案内人が不在のダンジョン」だったのです。

今こそ「人の力」を再定義してみる

結局、娘は「初心者が最初からひとりでパチンコをやるのは、無理な気がしてきた」とまで言いました。「案内してくれたスタッフさんが、しばらく付きっきりで教えてくれたらできるかも」とも。

アフォーダンスの本質は、「思考(迷い)を介在させず、直感的な行動へとスムーズに導くこと」です。パチンコという複雑な遊びにおいて、その役割を最も完璧にこなせるのは、AIでもサイネージでもなく、訓練された「現場のスタッフ」に他なりません。

「はじめてのおつかい」を支える街の住民のように、見守り、迷った時にそっと背中を押す。「人の手」による温かな誘導を磨き上げることは、パチンコ初心者やライトユーザーを増やす、施策のひとつになるのではないでしょうか。

文:アンサーズ編集部

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