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加熱式たばこプレイエリアの岐路――健康増進法5年見直しと業界団体の攻防

「ゼロリスク」を求める保健衛生

厚生労働省の検討会において、加熱式たばこ(HTP)の規制についての、「施行5年後の見直し」議論が本格化している。厚労省や検討会を構成する公衆衛生の専門家らは、加熱式たばこから発生する有害物質の「量」が紙巻きたばこの主流煙や副流煙に比べ低減されている事実は認めつつも、喫煙者が吐き出す呼出煙(エアロゾル)による二次曝露(いわゆる受動喫煙)のリスクを強調。「曝露量の低減が必ずしも健康リスクの低減には直結しない」との慎重な立場を崩していない。

経過措置をめぐる防衛戦――パチンコ業界の動き

4月16日に開催された 厚生労働省の「受動喫煙対策専門委員会・第4回」の関係団体ヒアリングには、パチンコ業界からは日本遊技関連事業協会(日遊協)が出席し「加熱式たばこ経過措置の維持」、すなわち「加熱式たばこプレイエリアの存続」を求める陳述をおこなった。パチンコホールにおいて、加熱式たばこエリアはもはや稼働を下支えする不可欠な「インフラ」と化している。現状の措置が認められなくなれば、滞在時間の低下、喫煙のための離席の長時間化が起こり、売上低下の要因になる可能性が高い。

今後、加熱式たばこの健康影響に関する研究結果(中長期的な健康リスクに関する疫学データが)の報告が予定されていることから、パチンコ業界は、「その結果をを踏まえずに、エビデンスがないままに結論を出すことは適切でない」と主張。しかし、保健衛生当局や禁煙学会等は、発がん性物質は微量であっても他者に吸わせるべきではないという「ゼロリスクの論理」により、規制の格上げを要請している。

主要国は「加熱式たばこ」をどう扱っているのか?

しかし、国際的に見ると、日本の現状が特殊だ。アメリカやオーストラリアと比較すれば明白である。米国FDAは、加熱式たばこを「紙巻きたばこよりもリスクは低い」と認めているが、扱いは区別していない。紙巻きたばこが制限される場所では加熱式たばこも同様に制限されている。「非喫煙者には、他人の吸うものを室内で吸わされない権利がある」という考えの徹底だ。

オーストラリアTGAは、「安全性未確認(紙巻たばこより健康リスクが減るという保証はない)」としたうえで、「有害性が低いと宣伝することで非喫煙者や若年層が使い始めるリスク(ゲートウェイ効果)を高めることになる」との考えから、紙巻きたばこよりも厳しい規制(事実上の販売禁止)をしている。

シンガポールではさらに厳しく、個人の加熱式たばこ(電子たばこも)の所持には初犯の場合で700シンガポールドル(約8万8千円)の罰金が科せられる。チャンギ国際空港でのCTスキャンによる検査、街中での抜き打ちの所持検査がおこなわれている。イギリスは加熱式たばこへの規制を紙巻たばこより緩和しているが、規制強化に舵を切り始めている。

研究結果は頼りにならない?

「5年ごとの見直し」の議論を鑑みれば、現在の緩和措置は決して永久不滅の既得権ではない。海外の事例にあるように、「紙巻たばこよりリスクは低い」という研究結果が出たとしても、リスクが「ゼロ」でない以上、それが現状の経過措置の存続の理由になるとは限らない。

また行政は、「予防原則」と呼ばれる、「科学的知見が確定する前に規制を設ける」という判断を下すこともある。実際、2026年に入り、厚労省の検討会資料では「予防原則」という言葉がより頻繁に使われるようになっている。

パチンコ業界は、加熱式たばこエリアが「使用不可」に追い込まれる日に備えておく必要がありそうだ。

文=Answers編集部

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