「今を頑張ろう」と向き合った
それが現在につながっている
異業種の前職を辞め、「パチスロが好き」をきっかけに、「玉屋」の屋号でパチンコホールを展開する玉屋(福岡県)へ飛び込んだ坂田潤二さん。想像以上の高い要求基準に苦戦しながらも、提案が評価される職場で成長を重ね、店長職を任されるまでに。現場と本部の双方を経験した坂田さんが語る、キャリアの転機と学びとは。文=田中 剛(Answers 編集長)

坂田潤二/株式会社 玉屋 営業戦略チーム
前職より高いレベルに苦戦
前職ではまだ若かったので、自身の給与待遇に不満はなかったのですが、あるとき上司の待遇に気づいてしまったんです。管理職の方々が自分の未来の姿かと考えたら不安になり、その会社を辞めました。
辞めてから、「さて、どうしよう」と考えたとき、ある本で読んだ「好きなことを仕事にするほうがいい」という言葉を思い出しました。当時パチンコホールに行くのが本当に楽しかったので、「一度働いてみるのもありかな。仕事として合うか合わないかは、働いてから判断しよう」と思って、よく通っていた玉屋に応募したんです。
しかし、配属された『玉屋野方店』は、前職よりも社内のルールは厳しく、身嗜みや接客接遇の要求水準が高かった。それに、ホールスタッフは一般職であっても、「お客様に楽しんでもらうために何ができるか」を常に考え提案していて、その提案内容のレベルの高さに私は驚きました。「自分の好きな華やかな場所で働けば楽しいだろう」という安易な気持ちはすぐに吹き飛びました。それまでの自分では通用しないと悟りました。
しかし、やりがいは大きいと感じました。自分のちょっとした提案が採用されて、その企画で増客した最初の体験は忘れもしません。
業績悪化店舗の立て直し
成果を認めてもらえる社風ということもあり、一般社員として玉屋に入社して、3年目に役職に昇進しました。入社9年目に店舗責任者(店長職)になりましたが、それは、「業績が悪化した店舗を若手にやらせてみよう」という、〈お試し〉のような感じでした。店長になる前は、集客特化の仕事を自分の強みと考えて集中的に行っていたのですが、店長になると予算達成だけでなく、風営法の知識も備えなければならないし、労務、人材育成、機能する組織づくり等々、やらないといけないことが一気に増えて、当初は大変でした。
しかし、業績不振店を何とかして〈お客様から選ばれるお店〉にしたいという想いが原動力となりましたし、辛さよりも楽しさの方が大きかったです。
運にも助けられてその店舗の増客に成功したところ、赴任から1年後には別の業績不振店舗への異動辞令が出ました。「たまたま業績が回復したのか、ちゃんと戦略にもとづいて立て直したのかを見極めたいんだろうな。よし、やってみよう!」と、少しワクワクしながら異動しました(笑)。

さかた・じゅんじ/1984年生まれ。スポーツ用品の販売などを経て、「好きなことを仕事にしてみよう」と2005年に一般職として玉屋に入社。入社3年目に役職に昇進、9年目に店舗責任者に昇進。2022年に営業戦略部部長。「個店の業績向上」という視点から「会社全体の業績向上」という視点での業務に取り組んでいる。
2021年に本部の営業推進部に異動してからは、個店の業績だけを考えていた立場とは異なり、全社的にどうすべきなのかという視点で考える必要があります。当然ながら、「店長の提案内容を実行に移してあげたいけど、会社としては、今はできない」という場面もあります。店長の気持ちもよくわかりますので、当初は、「できない」ということを店長に説明することが辛かったですね。
自分の考えの幅を広げる
仕事に限らず、何かを考える時には自分が経験したこと、見聞きしたことの情報の中からでしか選択できません。私たちは自分が持っている知識を、足し算したり、掛け算したりして何かを考えているわけです。ですから自分の好き嫌い、興味があるなしに関わらず、いろいろな本を読む、いろいろな人に会う、いろいろな情報に触れる、試しに体験してみることは大事だと思います。それによって考えの幅が広がります。
そして、その情報を活かして、積極的なチャレンジ(行動)に移すことが大事だと思います。ルールを知っていてもサッカーは上手くならないですからね。それに、自分の行動からの成功体験・失敗体験でなければ、自分の中に定着させることは難しいでしょう。行動に移さず考えるだけではPDCAは回らず、検証・改善の成長チャンスは生まれないからです。
人生に必要な基礎体力作り
私が玉屋に入社して間もない頃、想像以上の仕事の厳しさに、「辞めようかな」と思ったことがありました。その時に当時の上司から、「辞めるのは自分の選択だから止めはしない。ただし、『仕事が自分には合ってない』とか、『別にパチンコ業界で食っていきたい訳じゃない』と言い訳を並べて、今を頑張れないやつは、別の仕事でも頑張れない。やりたいことが見つかった時にも絶対に頑張れないぞ!」と言われました。
その言葉に、ハッとさせられました。たしかに私は、軽い気持ちで入社しました。しかし上司の言葉を聞いて、「目の前の仕事は、スポーツで言うところの “持久力を上げるための走り込み”のようなものなんだ」と考えるようになったのです。
スポーツでは基礎体力作りの積み重ねが、いつか来る最高のパフォーマンスの瞬間に繋がります。「仕事も一緒だろう。今すごく熱中している仕事という訳ではないけど、目の前にある仕事に対して真剣に向きあい行動すれば、仮に転職することになったとしても、将来の自分のためになるはずだ」と。もちろん、今の会社のためにもなるし、目の前のお客様のためにもなる。この考え方の変化が、その後の成長に繋がる大きな転機だったと思っています。
ただ、「将来の自分のために、今を頑張ろう」と思って仕事に向き合っただけです。それが結果的に評価されて、今の役割へと繋がったのです。
昨今、「店長になりたくない」という若い方が増えていますが、皆が店長を目指す必要はありません。ただ、目の前の仕事に真剣に取り組むことは、きっと自身の将来のプラスになるはずです。[END]
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